農林水産業

中山間地域の農業振興のための新ICT「自然と共生した高付加価値営農モデル」の開発

事業計画

東日本大震災による被災地の農業は、その他地域に比べて10~20年先を行っていると言われます。いわば課題先進地とも言える状況のなかで、さらに条件不利な中山間地域でも持続可能な、かつ自然と共生できる営農の方法を探ります。一方で、中長期的に予想されている食料ニーズの増加に応えるための営農ノウハウのICTを最大限に利用した保存と、その展開を事業化することを目指しています。

実施期間

2016-2018

実用化開発場所

葛尾村

連携自治体

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現状・背景

農業の効率化(大規模化)では、条件不利(小規模経営中心)の中山間地域の地域産業としての農林業は復興できません。しかし、ビジネスとしての地域産業が無ければ住民の帰還も不可能です。よって、ICTをフル活用した、「自然と共生する農業」の開発を通じ、浜通り地域の中山間地域の営農再開を支援し、もって地域振興・地方創生に寄与することが必要とされています。

研究(実用化)開発の目標

本事業では、以下の4点の目標を掲げています。営農再開支援システムのリリース。都市農村コネクティングシステムのリリース。上記二つのシステムの機能を利用した新しいサービス(もしくはシステム)の開発。上記のシステムを紐帯とした都市~中山間地域(葛尾村)をつなぐ新しいビジネスモデルを展開。これらにより、3~10名の雇用を創出することを目標としています。

研究(実用化)開発のポイント・先進性

日本の農業は、農業就労人口の劇的減少と、それに伴う農地の一部農業生産法人への集約化が進むと言われています。したがって、新規の農業の開発課題は「いかに大規模化に対応するか?」に力点が置かれています。一方で、福島県の浜通り地域の山間部には、一区画あたりの面積が大きくはない農地が多く、上述のような主流の開発課題からは外れてしまっています。しかし、地球全体で見れば人口は爆発的に増加しており、近い将来食料へのニーズが高まることは容易に予想されます。その時、中山間地域でも効率よく食料を生産するには、大規模化のノウハウだけでなく、中小規模の農業のノウハウも残しておく必要があります。
そこで本事業では、ICTを最大限活用し、既存の農業技術をデータとして取り込みつつ、農業への新規参入者、あるいは営農を再開する農業者を経営面で支援するシミュレーターとしての営農再開支援システムを開発しています。これに加え、条件不利な現場での農業を支える収益源の一つとして、都市部で就労している地方出身者等を対象に、農地をはじめとする地域資源管理のコストを負担する道を拓く都市農村コネクティングシステムを開発しています。

浜通り地域への経済波及効果(見込み)

浜通り地区全体では、作業委託を受ける「作業者」としての農業生産者・新規参入者が増加することが見込まれます。福島県内2010年度で2万2千haの耕作放棄地のうち、1/3程度が浜通り地区内として、7千haの農地の維持管理を行う者としては、年間1人あたりの管理面積を50haとしても述べ140名の管理者が必要となります。本事業のビジネスモデルにより、維持管理のみならず、農業生産が拡大すれば、その売り上げ増加分についても浜通り地区の経済活性化に繋がります。

これまでに得られた成果

都市農村コネクティングシステムは、携帯端末からも操作可能なインターフェイスを持っています。農作業のノウハウを記録する装置としては、従来は環境計測を主とするセンサ類やカメラが用いられてきましたが、本事業ではそれらに加え、「非身体性のロボット」とでも表現しうる装置を導入することで、Agricultural Informaticsの実現に大きく一歩近づいたと確信しています。また、営農再開支援システム内には、各種研究成果を反映しうるプラットフォームも装備し、今後の研究成果の社会実装に向けた有力な手段となることが期待されます。

開発者からの浜通り復興に向けたメッセージ

被災地の中でも、浜通り地域の抱える課題は最も厳しいと思われます。しかし、世界に目を向けてみれば、いずれ世界中のどの地域でも似たような課題を抱えることになると予想されます。その時、浜通り地域の現在の取り組みは、先進事例として扱われることになります。
本事業では農業を主軸に据えていますが、地域経済の活性化に寄与するビジネスを創出する上では、農業というジャンルに留まらず、地域内の様々な業種との協業が必要不可欠と感じています。浜通り地域の企業との連携ではIT・教育等のソフト領域や、建設業等のハード系双方が必要と考えています。

事業者の連絡先

国立大学法人東北大学大学院農学研究科東北復興農学センター / 株式会社SJC / トライポッドワークス株式会社