農林水産業

安全な農畜産物生産を支援するICT営農管理システムの開発

事業計画

スマホやタブレット端末から農畜産物生育の状況を画像やセンサで確認するICT営農管理システムを開発しました。特に、今年度は飯舘牛の復活を目指す畜産農家と協力して放牧牛の画像を1時間ごとにLTE-SIM経由で取得したり、畜舎内の子牛の相対体温やアンモニア濃度をモニターできるようにしました。また、昨年度開発したフィールドWiFiを利用してリモートで水田水口の水門を動画で確認しながら操作できるようにしました。

実施期間

2017-2018

実用化開発場所

飯舘村

連携自治体

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現状・背景

飯舘村では2017年4月に一部の地区を除き避難指示が解除されてから2年になりますが、実質的な帰村者は高齢者がほとんどです。しかし果敢に農業の再生にチャレンジしている農家がいます。一方、国はICT/IoTやAI、ロボットを利用したスマート農業を推進しています。こうした中で、本事業はICTを積極的に活用して飯舘村から新しい農業を創出しようとしています。

研究(実用化)開発の目標

①5万円程度の可搬型デバイスHALKAの工場生産(昨年度から継続)
②電柵の通電と電池の消耗状況を遠隔地から監視
③水田水口の水門をカメラで確認しながら大雨の際の放射性セシウムを含む濁水の水田流入の防止
④放牧牛の健康状態を定時モニタリング画像と動画により把握
⑤畜舎内の子牛体温やアンモニア濃度データと動画のAI解析による健康診断ツールの開発

研究(実用化)開発のポイント・先進性

今年度の開発のポイントは、昨年度開発したIoT機器の改良と飯舘牛の復活を支援する牛健康診断システムの試作です。可搬型デバイスHALKAはソーラーパネルが追加されたことにより電池交換が不要になりました。スマート電柵はWi-Fiの他、最新のLTEに対応することにより携帯電波が入る場所ならばどこでも使えるようになりました。また、フィールドWi-Fi技術により水田水口の水門を動画で確認しながら水管理できるようにしました。さらにはLTE-SIMとソーラーパネルを使って放牧地や畜舎から牛の画像配信が可能となり、牛の健康を診断するための相対体温やアンモニア濃度をモニターできるようになりました。

浜通り地域への経済波及効果(見込み)

本事業で開発している技術は商業電源を確保できないフィールドでICT/IoT機器を使えるようにするものです。今年度は浜通り地域のメーカーと共同開発するため交渉を始めました。来年度順調に協力関係が進めば、飯舘村生まれのオリジナルloT機器が国内外に販売され、地域の経済波及効果に繋がるでしょう。また、「ICT営農管理システムで生産者と消費者を繋ぐWebサイト」を公開しました。このページを利用しながら飯舘村オリジナルのIoT機器や農畜産物(牛、花卉、コメ)などの販売に貢献できそうです。

これまでに得られた成果

■可搬型デバイスHALKA(5万円程度)
機能:
①センサの測定値を自動アップロード
②スマホで測定値を確認
接続性:接続できるセンサ(温度、湿度、気圧、導電率、水位、土壌水分、空間放射線量等)
■改良型スマート電柵(価格未定)
■牛健康診断モニタリングシステム(開発中)
機能:
①放牧牛の定時画像モニタリング
②水飲み場の水質モニタリング
③畜舎内の子牛サーモ画像モニタリング
④畜舎内の空気環境モニタリング
■ICT営農管理システムで生産者と消費者を繋ぐWebサイト
http://madeiuniv.jp/connect/

開発者からの浜通り復興に向けたメッセージ

国の科学技術政策はSociety5.0という「超スマート社会」構築のための基盤技術開発を推進しています。スマート農業や農業ICT/IoTの技術はニーズに合わせて現場で試行錯誤しながら開発する必要があります。幸いなことに、この事業では帰村して農業再生を目指す農家の方々と本音の付き合いをさせて頂いているので、現場ニーズを直ぐにICT/IoTに結び付けられます。今年度オープンしたWebシステムを活用しながら、都会に住む人々に魅力を発信し、地元と都会の若い力を結集して浜通り地域で新しい農業技術の芽を育て、地域の復興に貢献したいと思います。

事業者の連絡先

国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科