農林水産業
飼料作物転換による農地再生・エネルギー生産等複合利用実用化に向けた開発
事業計画
牛用飼料作物として栽培されているソルガムを、緑肥利用、エネルギー利用等の複合利用実用化による農地再生・農業復興を目的に、浜通り地域に適したソルガム品種の探索・選定、農業機械の最適化・土壌改良によるソルガムの高収量栽培技術の開発を行うと共に、国内で実例の無いソルガム単独のメタン発酵技術及び牛糞併用によるメタン発酵技術を開発します。
実施期間
2018-2019
実用化開発場所
富岡町、飯舘村
連携自治体
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現状・背景
富岡町や飯館村をはじめとする浜通り地域の自治体では、農地保全管理について大きな危機感を持っており、食用作物が生産できるまでの期間、農地を耕作しながら管理できる作物、技術の開発に対し大きな期待を、また、牛畜産農家では、高収量、低価格、自給可能な飼料作物の栽培技術に対して大きな期待を持っている現状があります。
研究(実用化)開発の目標
平成30年度から2年間、農地再生技術、ソルガム等の飼料作物栽培技術・品種の開発を行い、事業計画を作成します。平成32年度には、浜通り地域に新たな事業会社を設立して飼料販売を事業化します。平成32年度の売上目標は、飼料販売で4,000万円、電力販売で1,500万円、熱供給で300万円、総額5,800万円を予定しています。
研究(実用化)開発のポイント・先進性
■放射性物質により汚染された農地での飼料作物栽培による土壌改良効果を、継続的に調査している事例が無い点。
■震災以降、浜通り地域のいくつかの地域で市販品種のソルガム栽培による除染効果等の研究は行われて来たが、飼料販売を目的として、浜通り地域に適した高TDN・高収量のソルガムの栽培技術、品種を探求する点。
■牛用粗飼料の代替飼料として、畜産農家の要望に合致するソルガム品種を探求する点。
■エリアンサスなどのエネルギー作物のメタン発酵試験は行われているものの、ソルガムを利用したメタン発酵試験は国内において事例が無い点。
浜通り地域への経済波及効果(見込み)
■行政主体の除草のみを行う保全管理から、民間主体の耕作管理へと移行
■緑肥効果から農地の地力回復
■食用農作物生産を始められる土壌の形成
■自給可能な牛用粗飼料確保による畜産農家の収益向上
■畜産業再開に向けた農家のモチベーション向上
■農業機械の大規模化に伴う飼料生産効率向上による耕畜連携
■ソルガムのエネルギー利用による耕種農家の安定的な収益確保
■バイオガス熱源及び電力供給による花卉栽培・施設園芸農家の収益向上
■牛糞利用による廃棄コスト削減と牛畜産農家の収益向上
これまでに得られた成果
■ソルガムの栽培管理及び育成経過データ取得と、効果的な栽培・収穫方法
■牛餌給与試験による粗飼料利用価値評価、輸入粗飼料からの代替可能な基準把握
■ソルガム収量調査と放射線量データ取得による事業化に適したソルガム品種探索
■メタン発酵10kWバイオガスプラント導入とソルガムのメタン発酵によるガス収量調査
■複数種類のソルガム栽培に向けた圃場設計、圃場の保水・排水対策
■事業計画作成に必要な情報の評価・検討
開発者からの浜通り復興に向けたメッセージ
元々高齢化が進み農業後継者不足という潜在的な課題を持っていた上に、放射性物質による影響も加味されて営農意欲が低下している現状があるものの、地域再生に向けて積極的に挑戦している畜産農家、耕種農家の方々もいらっしゃいます。弊社事業がそうした農家の方々の経営安定化に貢献し、その結果として、地域での安定的な雇用と経済循環の醸成、帰町村人口の増加、エネルギーの地産地消に貢献することで、将来にわたって浜通り地域の持続可能な社会形成に繋がることを期待しています。