農林水産業
農漁融合型産業推進を目指す、陸上養殖における熱利用および水質管理技術AquaNova(日本語名「アクアの場」)の開発
事業計画
農業と親和性のある陸上養殖を、再生可能エネルギー活用の環境コントロールにより実現できるかを研究します。陸上養殖は地下水を使用、海洋生物の場合は人工海水を想定し、微生物ろ過等の循環型でコンパクトなシステムを目指します。南相馬市小高地区という内陸で可能であり、かつ事業性のある養殖魚介類を探るのも、当プロジェクトの重要な意義です。
実施期間
2018-2020
実用化開発場所
南相馬市
連携自治体
-
現状・背景
現状:循環型となる陸上養殖では、魚介類の生息に必要な水質の確保が必須であるが、小高地区井水の水質分析と、結果に合わせたろ過システムの構築が課題です。
背景:帰還者が少ない小高地区の産業復興から考慮すると、陸上養殖においても大きな労力を必要とせず、かつ高付加価値の魚介類を養殖する方法について研究します。
研究(実用化)開発の目標
南相馬市における農漁融合型施設の可能性を追求しながら、コスト面及び技術面の課題解決と事業推進を大きな目標に掲げており、建設業から提案できる新発想の施設園芸や陸上養殖の検証、事業化に向けての研究開発要素を地域の関係者に報告し、評価や提言へと進化させていきます。
研究(実用化)開発のポイント・先進性
現状の陸上養殖におけるろ過装置は、水質汚染の原因物質(蛋白質、アンモニア、硫化物等)の物理化学的除去(フィルター等による除去)が主流であるが、本提案においては、物質循環に着目した生物的ろ過(水質汚染の原因物質の微生物による分解)の導入により、運用・維持管理の低減を目指します。(図1参照)
一方、自然エネルギーに由来する低温熱源を利活用した膨張器を用いた1次産業への適用により、最大の課題である初期投資とエネルギーコストの低減を目指します。(図2参照)
浜通り地域への経済波及効果(見込み)
29年度より実施している「AgriNova」(農業プロジェクト)との相性を期待し、農事と陸上養殖の相乗効果として農漁融合型かつ再生エネルギー活用型農林水産分野の先導モデルとなりえます。
以下「AquaNova」併設による効果項目。
①再生可能エネルギー(太陽光)による発電・蓄電と電力の供給、(太陽熱)による温熱、(地下水)による冷熱利用
②微生物循環ろ過の持続性検証による陸上養殖施設維持費軽減の経済効果
③農事と相性のよい陸上養殖開発における話題性
これまでに得られた成果
平成30年度は、要素技術の適用可能性を実証レベルで確認することを成果(目標)とし、実験養殖システム格納庫の設計並びに設置を行い、水質保全目的の20μフィルターろ過装置を導入、低温度域膨張器の設計を完了しました。
生物ろ過槽の有効性確認を目的に、実験用小型水槽による水質比較を金魚育成により実施、小高地区の地下水に存在する課題を認識の上、次年度実施予定の実験水槽、循環ろ過システム等の選定準備を進めました。
開発者からの浜通り復興に向けたメッセージ
南相馬市小高地区の皆様には、平成29年来大変お世話になっており、事業開始より計6回に渡り地域の皆様への説明会を開催してきた。ハウス組み立てや様々な設備工事なども地域の皆様にお手伝いいただきました。
陸上養殖自体、東北地方の実績は少なく、浜通り地域の内陸部において取り組めるとなると、新一次産業の振興に繋がります。イノベーション・コースト構想に沿った新技術融合の試みも入れ、小高地区で可能性のある陸上養殖を実現していくため、様々な実証実験を展開していきたいです。