ロボット・ドローン

海洋調査を目的とした無人観測船の開発

事業計画

本プロジェクトでは、海洋のドローンと言われている無人船(Unmanned surface vehicle: USV)を浜通りの企業を中心として開発することを目的にしました。海洋の仕事は、漁業、島しょ部の調査、物流及び原子力発電所のモニタリングなど様々想定されますが、いづれも人手と手間がかかっています。そのような仕事を無人で行えるツールとして浜通り印の無人船の市場での広い利活用を目指します。

実施期間

2016-2018

実用化開発場所

南相馬市、相馬市、浪江町

連携自治体

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現状・背景

海に囲まれたわが国では、海洋における様々な無人船の活用方法が考えられます。例えば、西之島のような過酷環境でのモニタリング、島しょ部の監視及びいけすの管理など漁業への活用などです。また福島第1原子力発電所事故時には汚染水の問題があり、放射線モニタリングへの活用も期待できます。そのような様々な業務に対応できる無人船の開発を目指しました。

研究(実用化)開発の目標

本研究の目的は、既存の無人船をベースとして要素技術の開発を行い販売用無人船の設計図の完成を目指しました。具体的には、1回の航行時間5日以上及び自動航行機能を持った無人船の開発、海底用放射線測定器及び自動土壌サンプリング装置の開発を目指しました。また、機械学習を用いた無人船の制御研究や既存の無人観測船を用いた海底地形図の作成技術の確立を行いました。

研究(実用化)開発のポイント・先進性

無人のタンカーやボート型の無人船が商品化されているなど世界における無人船の開発は進んでいます。海に囲まれたわが国においては、前述のように現在人手で行っている仕事を無人船で置換することにより、大きなメリットが生まれると考えられます。今回の研究で最終的に完成した無人観測船は、放射線の測定だけでなく、海底土サンプルの採取や水温等の海水の基礎的な情報を取得できるマルチセンサーを搭載しています。また、開発で得られた要素技術は様々な分野に応用可能と考えています。

浜通り地域への経済波及効果(見込み)

 研究の成果として作り上げた販売用の無人観測船の設計図は浜通り企業に技術移転し、販売できるように体制を整えます。また、無人船の売上げだけでなく放射線の測定技術や土壌のサンプリング装置等の要素技術個別の売上げ、さらに既存無人船による海底地質図の作成サービスなどの【投資額3億円、新規雇用者数10名、売上10億円】等の波及効果があると想定しています。また、今回の研究によって、海洋におけるセンサー開発のノウハウ、船の制御技術及び無人機制御のためのソフトウェア開発技術などの浜通り地域企業への技術のレベルアップに寄与できると考えています。

これまでに得られた成果

①ファイバー検出器を用いた海底測定用放射線検出器:海底での放射線測定を可能とします。
②自動土壌サンプリング装置:複数個の海底土壌のコアサンプリングを自動で実施できます。
③海洋調査用マルチセンサー:水中の水温、電導度、深さ、検出器の位置を同時に測定可能です。
④機械学習を用いた無人船制御アルゴリズム:無人船の海上での動きを学習させることにより、波や風の強さを考慮した自動的な無人船の定点保持及び最適な運航を可能とします。
⑤無人船による海底地形図作成技術:音波計測器を用いた海底の地形図を作成できます。

開発者からの浜通り復興に向けたメッセージ

今回のプロジェクトには、福島事故後の環境モニタリングを行ってきた日本原子力研究開発機構、すでに無人船を用いた福島事故後の海洋モニタリングに実績のあるウインディーネットワーク、無人船の開発実績のある海洋研究開発機構と放射線測定器メーカであるJREC、ウィンチメーカであるOCC、福島コンピュータ及び浜通りの磐梯マリーン、日本オートマチックマシン、協栄精機が研究体制を作り取り組んできました。既存の無人船を活用するなど、研究コストの省力化にも取り組み様々な要素技術開発を行った結果、海に面した浜通りにおける企業に重要な知見を提供できたと考えています。今後、産業化に向けてさらなる努力を行ってまいります。

事業者の連絡先

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 / 株式会社ウインディーネットワーク