ロボット・ドローン

無人飛行体をプラットフォームとする放射線分布の3D可視化技術の開発

事業計画

“見えない放射線を可視化する”―これは放射線から人を守ることはもちろん、その場所がどのくらい放射性物質で汚染されているのかを知るためにも重要です。環境中に飛散した放射性物質の分布を迅速かつ簡便に測定することを目的として、放射線の“見える”化を図る新型放射線イメージャーを開発し、ドローンに搭載して里山や住宅地の複雑な地形において放射性物質の分布を3D可視化する技術を確立しました。

実施期間

2016-2018

実用化開発場所

南相馬市、大熊町、双葉町、富岡町、楢葉町

連携自治体

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現状・背景

一般的に放射線量の測定に使用されるサーベイメータは、放射線の飛んできた方向が分からないため、放射性物質の分布を正確に把握することが困難でした。ドローンを用いて放射性物質の3D分布を取得するにあたり、放射線が飛んできた方向を検知可能な小型・軽量な放射線測定器の開発と、放射性物質のイメージを地形の3Dモデルに統合する技術の開発が課題でした。

研究(実用化)開発の目標

現在、福島県帰還困難区域屋外環境にて実証試験と製品化に向けた操作性向上を進めており、2019年度中の製品化を予定しています。本装置はシステム化を浜通り企業が担っており、浜通りでの試験実施・製品化を通して先端技術の発信を行うとともに、将来的には、国内の原子力発電所・自治体等に防災ツールとしての配備を見据えています。

研究(実用化)開発のポイント・先進性

放射線の飛来方向を検知可能な測定器としてガンマ線イメージャーがありますが、従来品は数十kgと重たいものでした。本事業では小型・低消費電力かつ高感度な放射線センサーに加えて、小型集積回路を採用することにより、ドローンに搭載可能な数kgの測定器を製作しました。併せて、ガンマ線イメージャーで取得した放射性物質のイメージを地形の3Dモデルと統合することにより、放射性物質を3次元的に可視化する技術を開発しました。この可視化技術により、複雑な地形に沈着した放射性物質の分布を、詳細にかつ迅速に測定することが可能となり、除染計画の立案に役立てることが出来ます。

浜通り地域への経済波及効果(見込み)

本装置の販売及び本装置を使用した放射線分布測定サービス業務の実施を検討しています。販売は2019年度中の開始を目指し、ドローン等資機材の購入や、浜通りでの測定業務に必要な人材の雇用など、浜通りの経済活性化に寄与していきます。

これまでに得られた成果

これまでに、小型・軽量なコンプトンカメラ(ガンマ線イメージャーの一種)を製作し、ドローンと組み合わせた遠隔放射線可視化システムを試作しました。既に浜通り地域(帰還困難区域)において本装置の実証試験を進めており、地表面の複数個所に沈着した放射性物質を上空から可視化することに成功しています。加えて、放射性物質の位置・形状を3Dで可視化するソフトウェアを開発しました。これらの技術を融合することにより、従来難しかった放射性物質の3次元的な位置特定を遠隔で実施可能となりました。

開発者からの浜通り復興に向けたメッセージ

本事業の開発成果を通じ、浜通り地域から世界に誇れるロボット技術・センシング技術を発信するとともに、国内外の秀でた関連技術を有する企業・研究機関と連携して浜通りの復興に貢献できる技術開発を継続していきたいと考えています。

事業者の連絡先

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 / 株式会社千代田テクノル